文化財 (10/10)

魚板(鰍魚)

魚板

魚板庫裡の入口にさがる巨大な魚鼓は、本式の呼び名を「はんぽう」といいお坊さんたちに飯時を告げるため叩いた木彫の魚。このような魚板は禅寺によくあるが、興福寺のものは日本一美しいと定評がある。長年叩かれたので、腹部は凹んでいるがこの音は案外遠くまで聞こえ、山裾までとどいたそうである。もうひとつ並んでさがる小振りの魚板は雌で、雄雌一対で懸けられるのは大変珍しい。中国の代表的な魚である鰍魚(けつぎょ)を象り、口にふくむ玉は欲望、これを叩いて吐き出させるという意味をもち、木魚の原型とみなされる。明朝の風格をうかがわせる魚板は興福寺のトレードマークとなっている。

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