文化財 (3/10)
媽祖堂(まそどう・ぼさどう) 県有形文化財
媽祖(媽祖)とは「菩薩」「天后聖母」などとも呼ばれる航海の守護神で、中国宋代に福建省に起こった土俗的信仰だったが、元代には江南から北京へ糧米を運ぶすべての船舶に祀られた。明代、鄭和の南海遠征や外国貿易の進展に伴い、台湾、日本、朝鮮半島、東アジアの全域に伝播された。長崎へ来航する唐船には必ず「媽祖」が祀られ、停泊中は、船から揚げて唐寺の媽祖堂に安置した。これを「菩薩揚げ」といい、賑やかに隊列を組んで納めたという。興福寺は、寛文三年(1663)の市中大火で境内の建物はことごとく焼失した。媽祖堂再建の年代は諸説あるが、寛文十年(1670)の扁額「海天司福主」が現存することから、この頃に整備されたものと考えられる。向拝、船底形本尊は、天后聖母船神で、脇立はふつう赤鬼青鬼と呼ばれる千里眼と順風耳。建築様式は和風を基調とし内外総朱丹塗、黄檗天井の前廊、半扉、内部化粧屋根式天井など黄檗様式を加味し、また軒支輪のある建物は珍しく、貴重な建築資料である。